#7 アヤメvsミオ


ピチモのなかで1、2を争う美少女ツートップが、数メートルの距離で見つめ合っていた。


スタイルや学力を別として、とにかく顔だけならダントツでナンバーワンのアヤメと、女優として売り出し中の正統派ミオである。


まず、ミオが口を開く。


「前から思ってました。アヤメ先輩だけは、ミオに媚(こ)びたりしない人だなぁ、って」


「ん?」


意図がつかめないアヤメ。


ミオ、続ける。


「ミオ、朝ドラに出たり、CMに出たり、だんだんピチレ以外のお仕事も多くなって。自然、女優として知名度も出てきて、雑誌とかの『2015年ブレイク必至の新人』みたいな特集にも名前もあがるようになってきて。そうすると、ピチ撮でも、最近、なんか浮いた感じになってきちゃって…」


「うん」


「そんなミオに対して、ピチモのみんなの態度が、じょじょに変わってきたんです。『女優さん』っていうか、『テレビで見る子』っていうか、そんな感じで。気軽に話しかけてくれるコも少なくなっちゃって」


ここで、一呼吸おいて。


「でも、アヤメ先輩は違った」


たしかにその通りだった。アヤメは、その子の人気とか、どこの事務所に所属してるとか、お仕事の量とか知名度とか、そういったもので人を区別するのは、死んでも嫌だった。


そんな信念を持っているので、ピチ撮で一緒になったミオに話しかける時も、アヤメは他のピチモみたいに遠慮したりは、しなかった。今まで通り、フツーに接していた。


「でも、ちょっと悔しかったんです」


ミオが続ける。


「アヤメ先輩って、そりゃたしかに、もうちょっとダイエットが必要かもしれないし、お勉強ももっとがんばったほうがいいとは思うけど、それでも顔は抜群にキレイだし、性格も良くってみんなから好かれている。なにより、ミオより…ピチ読からの人気もありますもんね」


アヤメは黙っていた。


「でも・・・」

  
ここで、ミオの声色が不気味に変わる。


「でも、先輩みたいな人、実は嫌いじゃないです。むしろ好きっていうか。うふふ、ちょっとレズっ気あるのかな? あたし」


さすがに、のんびりマイペースのアヤメも、ここでようやく自身に迫った危険を察知する。


「だからとても…」


ミオの目が暗く光った。


その瞬間、武器を持たないアヤメは、とっさにパッと体を翻(ひるがえ)すと、数メートル前方に広がる茂みに向かって、全速力で走り出していた。


「栄養ドリンクびーーーむ!!」


気合いの入った掛け声と共に。


そんな走り行くアヤメに向け、ミオは落ち着き払った手つきで、先ほどカノンから奪った銃を静かに取り出し、水平に構える。


「だからとても…」


そして、じょじょに遠ざかっていく背中に向け、4度続けて引き金を絞った。
 

≪ぱん・ぱん・ぱん・ぱん≫


「とても残念」