#6 サラvsミオ


そのとき、サラは反射的に頭をかばうように下げていた。


≪シュッ≫


すると、次の瞬間。つい先ほどまで、自分の頭のあったところで、鋭利な刃物が空を切った。


これにサラは、即座に反射する。


振り向きざまに、すばやく身体を回転させると、右手に持った木刀を、その何者かに向け、力いっぱい振り下ろした。


≪バシッ≫


木刀が、背後に立った者の腕を、みごとに捕えた手ごたえ。


「キャ!」


思いも寄らぬ反撃にあった影は、手に持った鎌を、思わず取り落とした。


すかさず、落とした鎌を、拾おうと俊敏に屈む影。


しかしサラは、それよりわずかに早く、影の顔の前に、木刀を突き出した。


すると、降参したように、影の動きが止まる。


そして、サラは見た。


影の正体は、見間違いようもない、ピチモ1の美少女で、尊敬する先輩、ミオだった。


ふいに、ミオが自身の顔の横に両手を上げて、降参のポーズを取ると、一歩後退する。


「こ、殺さないで。お願い。ミオを助けて」


続けて。


「お願い。ミオはただ、サラちゃんに話しかけようとしただけなの。ミオ、誰かを殺そうとか、傷つけようとか、そういうこと、全然思ってないの。お願い。だから、助けて」


その間、サラは無言で、ミオを見下ろしていた。


「信じて…くれる?」


上目づかいで、見上げるミオ。誰もが守ってあげたくなるような、どこからどうみても、幼気(いたいけ)な女の子である。


やがて、ミオの自慢の大きな瞳が、涙でいっぱいになる。


そのまま心底、おびえた表情で。


「あのね…、ミオね。サラちゃんなら頼れると思って。年少組なのに、いつもシッカリしてるし、運動神経も良さそうだし、優しそうだし。ミオね、怖かったの。ずっと…ひとりで。こんなことになって。こんな、わけのわからないゲームに巻き込まれて。もう、恐ろしくて恐ろしくて…」


ここまで聞いて、サラは真剣に考え込んだ。


もしかしたら、ミオ先輩は、ホントに怖かっただけなのかもしれない。極度の恐怖から、あんな攻撃的な態度に出てしまっただけなのかもしれない。


しかし、サラは甘かった。優しすぎたのだ。


そして、そんな優しさが命取りとなる。


サラが、ふと何か言おうと、口を開きかけたその瞬間。


≪シュッ≫


まさに一瞬だった。


鈍く銀色に輝く、鋭利な"何か"が、ミオの手元から放たれた。


ここにきてサラは、ミオの右手が、さきほどから背中に回って、コソコソ動いていたことに、ようやく思い至った。


しかし、その時はもはや、サラの小さな左胸に、元々はココロが持っていた、両刃のダガーナイフが、深々と突き立っていた。

やがてサラの口から、低いうめき声がもれると、そのまま膝から崩れ落ちた。




幕間 リカコ


「冗談じゃない! こんなところで、死んでたまるか!」


リカコは森の中を全速力で走っていた。「東北野生児」の名に恥じない、見事なフォームである。


「せっかく、せっかく、研修生から、『スマイレージ』改め、『なんちゃらム』の正規メンバーになれたのに」


しかし、その強気な態度とはウラハラ、瞳には、涙が浮かんでいる。


「昇格できるんだったなら、ピチモなんて受けなかったのに…」


ここで、改めて自分を奮い立たせるように。


「こうなったら、ゼッタイ最後まで逃げ切って、生き残ってやる!」


独り言(ご)ちながら、一気に森の中を駆け抜けるリカコ。


そんなリカコをすぐ近くからで目で追う2人組の気配に、全く気づかないまま。